第10回テーマ:自由について

27歳のときに勤めていた会社を辞めて、友人数人で事務所を設立した。どうしても作りたい企画があってあちこちへ持ち込んでいたら「これ、面白いから作りなさい。お金を出してあげるから」という人が現れたのである。当時アスキーにいたその人のお陰で企画を実現することができた。
「有限でいいから会社を設立しなさい。その方が手続きとかに便利だから」というその人のアドバイスで有限会社を設立した。
事務所の名前を何にするか、ロゴデザインをどうするか、事務所をどこに構えるか、どんな内装にするか、どんなスタッフを集めるか…。給料の分配から、就業時間から、就業規則すら自分たちで決めた。
会社勤めを辞めて独立してみると、怖いくらいに自由だった。
言ってみれば無法地帯である。法律や条例などは、破れば罰金や刑事責任を問われる。そういうペナルティーがあるから考え方や信条が違う不特定多数の人間全体に機能するわけだ。しかしペナルティーも伝統もなにもない、勢いだけで集まった連中が就業規則を決めたって意味なんかないんである。
信頼関係と熱量だけで突き進んでいた。
その事務所は空中分解したので、次にまた有限会社を設立した。最初の反省もあって、前より少し落ち着いた事務所だった。 ちゃんと仕事して社会的にも経済的にもちゃんとしてきたら自由でなくなった。知らぬ間に偉くなっていたし、歳もとっていた。
そして40歳になった今年、遂に、とうとうフリーになった。自分で設立した事務所にも不自由さを感じるくらいだから、人を巻き込んだり迷惑をかけないためにも、独りでやるのが進むべき道なんだと思った。
アンケートや書類の職業欄に会社員とか会社役員と書いて生きてきた。今でも個人事務所の有限会社の取締役をやっているけれども、最近では多少の恥じらいと、チクチクする自尊心でもって「自由業」と書く様になった。
「そんなんでいいのか?」
「そんなんで大丈夫なのか?」
という不安もあれば心配してくれる人も多い。しかしそういう不安や心配から解放されなければ自由にはなれない。自由とは勝ち取るものであり、その分のリスクを負うものなのだ。
自由を尊重するし、自由を愛する。
次回テーマは、ボクから。
「 100年後を予想する」。